ブルーベリーの幻想

 健康食品は「夢」を売り物にしていて、あたかも「それを飲めば病気が治る」ように錯覚させる文章が広告を飾っています。日本の場合は「この病気がなおる」や「病気を予防できる」など断言する広告だと薬事法違反で処分されますが、それでも薬事法違反ギリギリの文章で、効果のないモノを売り続ける商売が広がっています。「パソコンを長時間使う方にどうぞ」「小さい文字を読むのがつらい方に」といった遠回しな表現で目の病気をなおしそうな気配を演出しているのがブルーベリー、ビルベリーです。

 ビルベリーというのはブルーベリーの特定野生品種です。ビルベリーの主要成分がアントシアニン (anthocyanin)。これを元に調べた例です。 PubMedという医学論文検索サイトで”anthocyanin visual acuity” のキーワードで論文を探すと、 「The effect of bilberry nutritional supplementation on night visual acuity and contrast sensitivity. Muth ER, Laurent JM, Jasper P.」 という2000年の論文が(ほぼ上位10個以内に)見つかります。その要旨は「効果、無し。」です。つまり「ビルベリーは夜間視力の改善に、効果なし」です。 bilberry食べた人も食べなかった人を比較。夜間視力と夜間のコントラスト感度を調べた。二重盲検法で15人で実験。 bilberry食べた7人も食べなかった8人(ニセ薬を飲んだ8人)も夜間視力と夜間のコントラスト感度に差が出なかった。という要旨です。 本当に散々な結果です。他にも「ビルベリーは効かなかった」という論文はいくつかあります。
 論文で読むのが好きでなければ英文のWikipediaでもよいでしょう。Bilberry – Wikipedia の Possible dietary effectsの項目を見ると「ブルーベリー食べて爆撃が上手になったというのは、レーダーの発達で爆撃精度が上がったがレーダーの存在を敵に悟られない様にパイロットの食べ物が成功の秘訣だというニセの噂を流したのである」という結論が出ています。日本語記事ビルベリー – Wikipediaでも同様の事が書いてあります。このあたりを読むと、結局、ブルーベリー有効派の説は、西暦2000年でほぼ敗北したと言ってもいいでしょう。
 なお、ブルーベリー、その他ビタミン関連については、 稲葉眼科眼科専門領域のニュースに大変ためになる論文があります。 「2006-Feb カシス・アントシアニンは眼精疲労に有効か?」 「2006-Jan サプリメントとハーブ類の眼疾患に対する効果」のふたつは、おすすめです。
 「もうブルーベリーたくさん買ってしまったよ」という人は高級なお菓子を
買ったのだと気持ちを切り替えて食べたらいいでしょう。なお健康食品の安全性有効性情報の中で「アントシアニン」で検索するのもよい方法です。
(2005年に執筆、2014年に一部加筆修正。)

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