交通事故と目
なぜ眼科ウェブサイトで交通事故の話?
僕が三原市の総合病院に勤務していた時は、交通事故の患者さんをたくさん診察しました。
僕がケガした本人にたずねても「ベルトつけていませんでした」と答える人が多いですし、ケガを見ると「シートベルトしてればこんな怪我しないだろうな」と思うことがしばしばです。私は警察の立場ではないので制限速度を守ろうとか言うつもりはありませんが、「車に乗るならもう少し気をつければケガせずに済むのに」と感じることをここで紹介してみます。シートベルトやエアバッグについて、もっと多くの人に知ってもらえれば、と思います。 (めだまカフェでは1998年からチャイルドシート使用義務の法制化を訴えていました。日本でのチャイルドシート法制化開始(2000年)はドイツやアメリカより遅い開始でした。)
シートベルトは目を守る
どんなに運転が上手でも事故はおきます。事故は自分に責任がなくても向こうからやってくるものです。たとえ時速20kmでも衝突すると、人は自分の体をささえることができません。衝突時にシートベルトをしていないと、人の頭はダッシュボード、前面ガラスにぶつかるか、または車外に体が出るため、激しいけがをうけますよね。シートベルトをつければ生存率が高くなり、頭部のケガをする率が下げられます。頭にけがをしないということは目のけがも減るということです。
シートベルトはなぜ義務なのか?
「自分の体を自分で守るなら、ベルトはつけたい人だけつければいい」という意見もあります。ですが自動車の事故で重傷を負った人は事故の直後に警察への通報や処理ができないことで二次災害をふやします。怪我の治療費は本人が全額払うのではなくて医療保険や自動車の保険で多く支払われるのだから、けが人が増えると公的な支出(健康な人や事故してない人からの出費)が増えます。判断力のない子供が何も知らず事故でけがをすると、運転手のせいで無用な怪我をすることになります。そういう事情を考えると、シートベルト着用の法制化は合理的ではないでしょうか?
筆者は、むしろシートベルト着用が義務でなかった時代が長すぎたとも思います。少し冷たい考え方でしょうが、国民全体のシートベルト着用率が今よりあがれば無駄な怪我も減って、医療費の全体の支出もへっていきます。(こういう統計とっていないんでしょうかね。ベルト着用の法制化の前と後とか。警察の方いかがですか?)
ベルト着用義務化前後の事故の数 s61.12.10 (1986年)日付。「第107回国会 交通安全対策特別委員会 第2号」に、
「八島政府委員 シートベルトの義務化に伴って事故減少の効果が上がっているのかというお尋ねで
(中略)全体の事故が、これは物損事故も含めてでございますが、一〇・四%増加している中にあって死者数は逆に九%減少という結果を示しておりますのは(後略)」と、義務化の前後で死者数が減少したとの発言があります。
参考にシートベルト着用に関する統計は平成14年から24年(2002-2012)統計なので前座席の着用義務からだいぶあとの統計です。
ベルトしないのが安全か?
昔シートベルト着用が義務になるころ、なぜか「スケートの渡辺絵美選手が事故にあった時、体が投げ出されて命が助かったからベルトしない方が安全」てな極端な意見もありました。私は偶然助かっただけのこんな例をとりあげてベルトしないのが安全だなんて到底思いませんが…ただし非常脱出の際の「ベルトを切る道具」というのは必要な場合もあるかもしれない、と思っています。使う可能性はとても低いけれど。
資料。交通事故総合分析センターの資料2012年で「「後席乗員がシートベルトを着用していなかった事故の特徴」が参考になります。
妊婦もシートベルトをぜひしめましょう
日本では「妊婦の人はシートベルトをつけなくてもよい」という現状ですが欧米のルールでは妊婦もシートベルト着用義務が主流です。「シートベルトの位置を、腰骨のできるだけ低い位置に」を守れば母体も胎児も、ふたつの命を守れます。「妊婦シートベルトの会」をご参考にどうぞ。自動車業界、警察関係も徐々に「妊婦もシートベルトを」の方向に傾いてきたようです。(2005.4月)
(追記。2008年以降、警察でも妊婦のシートベルト着用を指導。 タカタ社のシートベルト解説を参考に。)
(編集途中です。2014.5.7)
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